Official Blog

2016.11.05 / BLOG 展示会(Exhibition) 

「CYCLE MODE SHOW 2016」 2

cycle mode1

ついに始まりました、サイクルモードです。
金曜は、主にB to B day と思っていましたが、お天気が良かったのか、午前中から一般の方も含め、お客様が結構いらっしゃいました。
やっぱり、さすがはサイクルモードショーです。

今回から、個別に当ブースで出展しているブランドに関し、説明を少し・・

orbit2

ORBIT DESIGN(ホイールセット)

今回、初参加の、ORBIT DESIGNは、自転車生産国、台湾のニューカマーです。

残念ながら、我々日本は時代の流れによって1980年代を境に「自転車王国」の座を明け渡してしまい、現在、世界中のミドル・ハイエンドの自転車の90%以上は、台湾もしくは台湾資本のメーカーが生産していることは周知の事実です。

我々の目には、台湾の自転車と言えば、例えば「GIANT」や有名なブランドだけが目につきますが、自転車は数百のパーツから構成されていますので、その裾野のパーツメーカー群を、おそらくは千社以上抱えているということです。
もちろん、さらに裾野の裾野の部品は、製造コスト上、中国や南アジアの会社の生産であることもありますが、組み上げの関係上、結局のところ目ぼしいパーツは、台湾国内に集約されてきます。
台湾主催の展示会に足を向ければ、その姿・すそ野の広さの一部をかいま見ることができます。

自転車という産業に限らず、一般の工業は、その裾野の広さによって、頂点に立つ完成品ブランドの位置決めが決まると思います。

例えば、自動車であれば、日本は現在自動車王国と言われ、自家用車のほかトラックバス等も入れれば、14-15社の名の通ったメーカーが国内に存在します。
小さな国なのに、こんなにメーカー数が多い国は、世界のどの先進国にもないはずです。
しかし私は、そのブランドではなく、裾野に注目します。
日本には、完成自動車メーカー以上に、自動車業界で世界的に有名な部品メーカーが沢山存在します。
ユーザー目線では、ドイツのM社やB社、W社などのほうがハイスペックの車を作っているという方もありますが、それらの会社の部品のうち、本当に高品質が求められる部品の多くは、日本製もしくは日本の素材製、OEであるはずです。
すなわち、自動車における日本ブランドの立ち位置は、「下請け自動車部品会社」と言われる裾野の広さ・厚さと、その技術産品の高品質がそれを支えていると考えます。

振り返って、自転車であれば、やはり、現在の台湾の自転車産品の裾野はとっても広く、重層的であると思います。

では、このような事態が続くとどのようなことが起きるか?
という、良い例が、今回出展している「ORBIT DESIGN」社であると思われます。

突然変な例ですが、
毎日毎日、数少ない食材しか食べない生活をずっと続けている国では、国民の生涯の食生活は皆、質素になるでしょう。
しかし、毎日の食生活が豊かであると、面白いメニューやレシピを考え始める人が、自然発生的にぽつぽつ出てくる。
最近話題の「日本のラーメン文化」などはこれを代表していると思います。。。
豊かな食生活環境が、斬新で面白い「味」を創造している。

自転車王国の中で、沢山の情報や製品環境の中にどっぷりつかって生活しているエンジニアは、いろいろなものを見て観察しているうちに、取捨選択の上で、的確に「新しいもの」を自然体で発想・創造していくことができる。
そしてスモールビジネスを何の抵抗もなく立ち上げる。
別に、大メーカーではないけれど、周りの設計、製造や、テストにかかわる環境をフルに使いながら、少ない労力で、最適なものを作り上げられる。

そんな、知恵とエッセンスが、ORBIT DESIGNの商品の中には随所に織り込まれています。
この会社の得意分野は基本的に、コンピューターを駆使した、設計と生産品の分析と解析です。

orbit1

まず、そのコンセプトは、ハブ、スポーク、リムそれぞれのパーツが高性能であることは基本ですが

*ホイールをハブ、スポーク、リムの一つ一つのパーツとして、スペックを考えるのではなく、「ホイールセット」を3つで構成されている「一塊のモノ」として性能を発揮するように考えて、すべてを同時並行的に開発していること。

もちろん最近の、ヨーロッパを中心とするレースシーンでは、この考え方が主流になってきているようですが、発想の出発点が違うように考えます。

ヨーロッパでのレースシーンでの「ホイールセットを一塊のモノと考える」という流れは、
まず、高性能なハブ会社が軽量でスムーズなハブを作っていたという歴史があり、
次に、リム会社も、軽いリムを作った。さらに、それらを軽いスポークでつないでみた。

しかし、後輪のスポーク長は左右非対称だし、車輪全体のパワーバランスをどうとるか?単体では高性能と言われるハブとリムとスポークの組み合わせたはずなのに、何故かレースのタイムに出来不出来ができてしまう事実に対して、ようやく、「ホイールセットを一塊に考えて性能を出そう」という流れが起き始めた。

すなわち、各パーツをそれぞれ別のパーツメーカーからの供給を受けて組み上げる習慣に基づいた「歴史的事実」がレースシーンで問題を提起してしまい、それの対応として上記の発想が出てきたということです。

一方ORBITでは、台湾国内で生産されるいろいろなパーツと、作り出される組み合わせを眺めていて、初めに
「なんで、車輪一塊で性能を向上させるよう、あらかじめ設計しようとしないのだろう・・?」
という、疑問が開発の原点となっている。
先入観・分け隔てなくいろいろなパーツの解析・分析をする人らしい目線です。

各パーツのメーカー内にいたエンジニアや、供給されたものだけを組み合わせていた現場の人ではなかなか発想ができない視点を、生産国の利点を生かし俯瞰的に観察していたのです。

実際に、ORBIT社のハイエンドホイールセットの、各パーツはどれも高性能ですが、とくにスポークの部分は見た目にもわかりやすく非常に特徴的です。

すなわち、カーボン製の上、極細で超軽量。一般の方はそのスペックに目が行きがちですが・・・
カーボンスポークの軽量化と高剛性を主眼に作られている他社のレース用カーボンエアロスポークとは異なる性質を持っています。

orbit3

実際に見ても、一般に他社のカーボンスポークよりかなり細く、このことで、長時間のハイスピードライディングに於いては、空力特性の恩恵を大きく受けられます。すでに、社内の分析テストに於いて、最近の太いエアロカーボンスポークより、総合的な空気抵抗の値が低いことが証明されています。

さらに、このカーボンスポークは、本来の特性である「引き」に対し強い性質を持ちながら、さらに「押し」に対して、しなりを持つよう設計されているので、加速に対してはリニアにパワーを伝達できる反面、ホイール全体ではショックアブソーバー効果が得られるため、太いエアロスポークのホイールセットより、長時間ライドに関し疲労の軽減につながるようになっています。

何故こんなに細くできるの?との疑問には、「あらかじめハブ、リム、スポークを一塊として設計を開始し、バランスよく、いろいろな仕掛けを入れ込んで製作してるから、、」という答えが自然に出てきます。

orbit4

すなわち、ヨーロッパテイストのプロダクトとは異なり、筋力が大きな人が、軽く・硬く、パワーを効率よく伝えるという目的のコンセプトだけでなく、アジア人的な「柔良く剛を制す」という、非力なライダーのレースシーンにアドバンテージを与えてくれる設計なのです。

私たちは、一般に商品を、外見的なデザインやブランド、重量等のスペックの面だけから評価しがちなので、「どのようなコンセプトでこのようなデザインにたどり着いたのかしら・・・」という点を思考する事を見落としがちです。
ORBITのデザインは、その開発視点や開発者の才能のみならず、生産王国の環境が一つの大きなきっかけになっているとも考察できます。

豊かな生産環境のゆりかごの中で、プクプクと泡のように醸成される、斬新な創造・・・
「台湾国 ホントに恐ろしや」そんなことを考えさせられてしまうデザインなのです。

かたや私は「ゼロ戦」が「ワイルドキャット」を駆逐する・・・そんな、日本の二時代も昔のことに思いをはせながら、
日本にも再び、将来こんな自転車の開発環境ができればいいのにな・・などと少しうらやましさを感じてしまいます。

No Comment

Post Comment

Message *Required
Name *Required
E-mail *Required
Website

INSTAGRAM
「#5linksbike」のハッシュタグを
つけて投稿しよう!